2007年12月13日

食育と味覚形成

 学童期は食育を進める上で特に重要な時期に位置づけられていますexclamation
日本歯科医師会が刊行した「歯科関係者のための食育推進支援ガイド」をみますと、歯科からのアプローチでは特に口腔の形態的発育および機能発達の観点から咀嚼を中心にすえてその重要性が取り上げられています。

 一方約30年前に食育を学校教育に取り入れたフランスでは「味覚を目覚めさせる授業」として始まりました。
醸造学者のジャック・ピュイゼ氏が1974年から「感覚の目覚め」コースとして行われてきたものです。

 「味覚(五感)食教育」の体験を中心にした学習であり、「食のグローバル化」、「食の画一化」に対して、伝統的な食文化を見直し、教育に取り入れることで、食べる人の感性の喜びと持続した食の楽しみを運動としたものですひらめき
紀伊国屋書店より発刊されている「子どもの味覚を育てる−ピュイゼ・メソッドのすべて」に内容が詳しく解説されており、

・学童期の5〜12歳は味覚・嗜好形成において生理学的、心理学的に大きな影響を及ぼす時期
・食物の甘味、塩味は嗜好性が高い味であるのに対し、苦味、酸味は嫌われる味。そのため、食物の豊かな味覚を獲得するには、低年齢のときにこれらの味を食物の種類・調理などから学習、体験することが必要
・このような学習・体験が無いと、甘味や塩味の嗜好が強くなり、その後の食物、間食の嗜好や選択に影響する。味覚教育は、子どもの食の選択能力を高める意味でも重要。
といったことが述べられています。

 子どもは生まれた時から、必要な食べ物の味を知っているわけでなく、甘味と塩味以外の味は学習によって食べ物であることを認識するのです。
最もわかりやすい例は「野菜」の摂取ですexclamation
生野菜の味は主に「苦味、酸味」です。
苦味は毒の味であり、酸味は腐敗物の味です。
子どもがこのような味を嫌うのは「本能」のようなものです。
しかし野菜を摂取しないと体が出来ません。
そこでこれを加熱調理することで「苦味、酸味」をやわらげ、野菜自体が持つほのかな「甘み」を引き出すのです。
そして調味料として若干の塩味をつける。こうして子ども達は「野菜」を食べ物として認識します。

 甘味・塩味は嗜好性の強い味なので、小さいうちからこれらの味に慣れてしまうと、温野菜のほのかな甘みなど感じることが出来ずに「野菜嫌い」の子どもになったり、「平板な味覚」しか持たない子どもになったりするのですふらふら

 ところで、学校歯科健康診断時の留意事項に「児童虐待及び軽度発達障害の早期発見」が目的として追加されました。
これは、むし歯、歯周病などのハイリスクの児童生徒の中に、虐待を受けている児童生徒が含まれている可能性があるからです。
すなわち、保護者により養育放棄を受けているいわゆるネグレクトの児童生徒は、ファーストフードや間食類、市販飲料類などの頻繁な摂取といった、食生活の非常な偏り(これらの食品は一般の食品に比べ嗜好性が強い、すなわち甘味や塩味が強くなっているのが特徴で、習慣的に摂取するようになります)によって口腔環境が悪くなり、う蝕や歯周病といった歯・口腔疾患が発生しやすいのです。

 養育放棄を受けている児童生徒に食生活の非常な偏りが見られると述べましたが、これはネグレクトの児童生徒に限ったことではありません。
親の労働環境の変化や子どもの塾通いといった生活様式の急激な変化によって、家族が食卓を囲まない「孤食」「個食」やファーストフードに代表される「食のグローバル化」、「食の画一化」が進みつつあります。
この問題は日本だけでなく、世界的な問題となっており、現にアメリカをはじめとした先進国においては、実際に健康を害し、手術を受けなければならない子どももいるようですたらーっ(汗)

 健康な歯と口を作るためには、まずは食生活が基本にあります。
いままでのむし歯予防を考え直したとき、一方的に「甘いものを食べるな・飲むな」と指導していなかったでしょうか。
これからの指導は「選んで食べよう・考えて飲もう」ですぴかぴか(新しい)
そのためには、子どもの味覚が正常に発達した上で、適切な食生活ができるような食の教育、すなわち「食育」が重要となってくるのです。

 児童・生徒の健康つくり・食育のサポートは、学校と地域そして家庭が担います。
学校は教師と学校歯科医の指導・助言、地域は「かかりつけ歯科医」の事後処置、家庭も健診などの結果をもとにした家庭教育。
この3つのグループが組んでやっと児童生徒の口の中の健康のサポートが可能となりますわーい(嬉しい顔)

参考文献
子どもの味覚を育てる
ピュイゼ・メソッドのすべて 紀伊国屋書店
おいしいハンバーガーのこわい話 草思社

平成19年度 鹿児島県歯科医師会健康セミナー
日時 平成20年2月9日(土)14:00〜16:00(受付開始13:30〜)
会場 鹿児島県歯科医師会館5皆大ホール
   参加費無料
講師 四元 みか先生(鹿児島県歯科医師会会員 よつもと矯正歯科)
演題 「口の機能の発達から見た食育−食と子どもの口育て−」

鹿児島県歯科医師会学校歯科部会発行
県学歯部会だより 第9号 より
posted by 毛利歯科ふれあい新聞より at 16:16| 食育関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする